どんな「組織サーベイ」を選べばいいのか?

診断型組織開発とは

診断型組織開発は、文字どおり「診断」に重き置いたを組織開発です。組織を、使命、戦略、インフラ、リーダーシップ、文化などの要素から構成されるものとして捉え、専門家によって組織の現状が診断されます。そしてあるべき状態を実現するために、どの要素が問題になっているかが明らかにされ、その解決に向けた効果的な手段が計画されます。

例えば、ある企業において「従業員満足度調査」などが実施され、人事部やコンサルタントを中心とした専門家チームがその分析を行い、満足度を高めるための施策を実行していくといった取り組みが診断型組織期開発と言えます。こうした診断型組織開発は、組織メンバーにとって論理的に受け止められ、経営幹部を説得しやすいなどの利点があります。一方で診断型の組織開発は、「変革させる側とさせられる側に分断されやすく組織のメンバーが受け身になる」「施策が押しつけで現場の状況と合わなくなり期待する成果につながらない」と言った意見がありますが、これは診断型以外のアプローチでも起こり得る問題でもあるので正確な指摘とは言えません。

組織サーベイとは

組織開発を行う時に実施する「従業員満足度調査」や「エンゲージメントサーベイ」などを組織サーベイと言います。組織サーベイは、組織診断とも言われますが、上手に活用すれば組織をより良くするための有用なツールになる一方、その選択を誤るとムダな投資になるとも言われています。診断型組織開発は、

1.「何を変えていくのか?」(目的)について関係者間で合意

2.組織のデータの収集、データの分析、分析結果のフィードバック

3.具体的な施策の検討

4.施策の実施

5.結果の測定

たいていこのようなプロセスで進められます。組織サーベイはプロセスの主に2.の「データの収集」と、「データの分析」、及び5.の結果の測定で使用されます。つまり組織内で発生している問題の「真の原因」とそれを裏付ける「事実」を把握する、また真の原因が取り除かれ、問題が解決したかどうかを測定するというのが組織サーベイを行う目的になります。

組織サーベイの「手段の目的化」

組織サーベイには、「メンタルヘルス」「モチベーション」「エンゲージメント」などその時々に登場した新しいコンセプトを取り入れたものが多く開発されてきました。確かにこれらのコンセプトは多くのどの企業でも重要視すべきものなのですが、それら多くの企業で採用されているコンセプトをものさしにして自社を測定することが、本当に効果的なのかをよく考えてみる必要があります。組織サーベイの本質は「真の原因」の把握とその「施策」への反映にあります。「自社の真の原因をその組織サーベイで適切に把握できるのか?」この問いが組織サーベイを選択する時にとても大切な問いかけとなります。

サーベイのコンセプト・プレゼンテーションと定規

「この組織サーベイは自社にとって有効か?」を考えるときに、組織サーベイそのものが語っている「コンセプトのプレゼンテーション」とサーベイが「何を定規にしているか?」の2つをまず理解する必要があります。

1.コンセプト・プレゼンテーション

例えば、「従業員エンゲージメント」がコンセプトの組織サーベイは以下のようなプレゼンテーションを持っていることが多いようです。

・「人口減少」「長時間労働」「働き方改革」などの環境変化が起きている

・だから多くの企業で(貴社も)何もしなければ「従業員エンゲージメント」は低下する

・実は「従業員エンゲージメント」は業績向上に影響を与えるという研究結果がある

・貴社も「従業員エンゲージメント」をサーベイし、その後対策をする必要がある

2.定規

用いられている定規(これをものさしにしてサーベイを実施して結果が良ければ、統計上●●が良いと言い切れる)については、例えば従業員エンゲージメントがコンセプトの場合、

 ①「Q12」→ギャラップ社が開発したエンゲージメントを診断できる12個の質問

企業に従業員に対して、以下の12の質問(Q12を測る12質問)に対し完全に当てはまる(5点)やや当てはまる(4点)どちらともいえない(3点)やや当てはまらない(2点)完全に当てはまらない(1点)で回答し、結果を集計する。

<Q12の質問>(抜粋)

・私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。

・私は自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている。 

・私は仕事をする上で、自分の最も得意とすることを行う機会を毎日持っている。

 ②「eNPS(employee Net Promoter Score)」→ベインアンドカンパニー社の開発した尺度。

NPSというインターネット上でサービスやブランドに対する消費者のエンゲージメントを測定する尺度を、企業に対する従業員のエンゲージメントを測定するためにカスタムしたもの。

<eNPSの質問>(抜粋)

 「あなたは現在の職場で働くことをどの程度親しい友人・知人にすすめたいと思いますか?」という質問や「仕事の充実感」「上司との関係」「福利厚生」「有給休暇の取りやすさ」などのより詳細な項目についてそれら推奨度の点数をつけるにあたりどの程度加点もしくは減点に影響したか?といった評価を集める。

 このように同じ「従業員エンゲージメント」をコンセプトにした組織サーベイなのに、その開発者により定規が違うということがあります。

 組織開発は社会構築主義に基づく

自社の問題がどのようなものなのかを考え、それに合う組織サーベイを選ぶ、またその組織サーベイが信頼に足るものなのかを吟味するということは当然ですが、では最後に間違いのない選択をするにはどうすればいいか?というとその回答はありません。よく組織開発は「社会構築主義」に基づくとい言われています。社会構築主義とは、

・人々が現実として認識しているものは社会的に構築されたものであり絶え間なく変化していく動的
 な過程である。

・人々の解釈、認識によって現実そのものが再生産される

・意味は会話の中で構築され人が認識しているものは社会の相互作用により生成される

という考え方のことです。だから組織サーベイを提供するベンダー側がこのコンセプトが正解だの、この尺度が正しいだの言っても、それが正解ではなく、自分や会社の経営陣が正しいと言ったサーベイのコンセプトや尺度が正解になるということです。巷でどんなに素晴らしい、有名だと言われる組織サーベイを使ってもその結果組織全体がやる気を失い、行動が出来ないようになってしまっては元も子もないからです。自社の問題に即していると思われる組織サーベイを選択することが正解であるという認識を持つことが組織サーベイの選択にはとても大切です。

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