OKRブーム?の背景(その1:ノートレーディング)

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OKRとは何か?

まず初めに「OKR」とは何でしょうか?知っている方も多いと思いますが、「目標管理」の手法の1つです。「Objective & Key Results」の頭文字をとって「OKR」と呼んでいます。 2014年に「How Google Works」で、Googleが採用している手法だと紹介されて以来、ITのスタートアップ企業を中心にその導入が進みました。また日本企業では株式会社メルカリ(東京都港区に本社を置く日本企業でフリマアプリ「メルカリ」のサービスを運営している会社)が「OKR」のレポートと言えば必ずその名が出るほど好導入例企業として紹介されますが、多くの日本企業でも導入が進んでいます。ではなぜ「OKR」の導入が我が国でも進んでいるのでしょうか?

 

2016年のアメリカの「ノーレイティング」ブーム?

「ノーレイティング」はつまり「人事評価をしない」「人事制度はいらない」という動きのことで2015年には既にフォーチュン500の約10%の企業が導入していたと言われています。「ノーレイティング」は、実際には「まったく評価をしない」ということではなく 「年度単位のA,B,Cといった社員の格付け(レイティング)や社員の評価を止める」という動きのことです。

アメリカ企業においても年初に年度の目標を設定し、中間で進捗のすり合わせを行ない、年度末に実績を踏まえてレイティング を実施し、本人にフィードバックを行なうというプロセスが行われています。「ノーレイティング」は、このような「目標管理」を変革する動きであると言えます。しかし、日本企業でも当たり前に多くの企業で行われていると思われる「目標管理」のプロセスのどこが問題だったのでしょうか?

従来の「目標管理における評価(レイティング)」の問題点

大きくは3つあると言われています。

1.「失敗すると評価が下げられる」と思い萎縮し、社員が潜在能力を発揮できない。

2.「専門性が高く、モダンな人材」が、従来の評価で測ると、低評価になってしまう。

3.毎度大多数の人が「ほどほど評価」に落ち着きモチベーションが上がらない。

この3つの問題を見ていると、そもそも評価などするからかえって、やる気が無くなり能力を発揮できない・・・と言えそうです。しかし社員の「やる気」や「能力発揮」はとても大切なことです。では評価をしないのなら、いったいどうすれば企業は社員の「やる気」や「能力発揮」が得られるのでしょうか?

「ノーレイティング」を成し遂げると同時に米企業は何を行ったか?

昨今のビジネス環境はそのスピードが加速しています。故に新しい製品・サービスが受け入れられるかは、実際にマーケットに出してみないとわからないと言えます。つまり市場へ投入後も、顧客の声を聞きながら変更を加えていくようなアジャイル(=素早い)な仕事の進め方をしなければ競争には勝てません。

このようになってくると個人の目標設定やフィードバックもアジャイルに実施されないと現場の現状と合わなくなります。年度単位で設定した目標がわずか数カ月や数週間で変わらざるを得なくなることもあるからです。 よって個人の目標設定やフィードバックがアジャイルに行われるようになれば、現場は活き活きとし、変革を起こしやすくなり、結果として成果も上がります。

また社員の最大のパフォーマンスを引出すには不可欠なのは「心理的安全」や「内発的動機」が必要だと言われています。アメリカ企業はそれを引き出すため、「ノーレイティング」、つまり年度単位での目標管理とその人事評価を廃止すると同時に高頻度でのフィードバック(対話)を増やしたと言われています。

しかし、本当に上司は頻繁に対話ができるのでしょうか?これに関しては「社員の能力開発・キャリア開発も自分の仕事だ」というマインドセットが重要なのはもちろんですが、評価時期(年度末や期初)に大量に割いていたフィードバックや対話の時間を平たくすると、つまり短い対話を頻繁に行うと、時間トータルでは今までとあまり変わらなかったという意見があるそうです。また「ノートレーディング」そのものが、膨大な時間のかかる年次評価作業から解放してくれる分、その時間も対話に使っていけるので高頻度な対話が可能になったと言われています。

給与や昇級・昇格はどう決めたのか?

では、年度の等級や格付けをせずにどうやって給与を決めたのか?これで最も多かったのがマネジャーに原資を渡してマネジャーが決定するという方法でした。年次ごとの評価があろうがなかろうが、業績データや日々の業務に関する情報をマネジャーは当然把握しているはずです。また、上記で述べたようにもし期中に高頻度な対話があれば、対話の中でメンバーにその時点でのマネジャーの評価も伝えることもできますし、メンバーも自分が現時点でどう評価されているのかが分かります。このすり合わせが給与などの報酬の決定の際にメンバーの納得感を年次評価であったときよりもより高いものにしたそうです。

また、昇級・昇格の決定に関しては、それまでと変わりはなかったそうです。もともとほとんどの企業が年次評価だけでそれを決定していなかったからです。新たなミッションを遂行するための能力やマネジメントやリーダーシップに関するアセスメント等で、総合的にそれを判断していたので変わりはなかったのです。

まとめ

評価制度のあるなしに関わらず、「部下の能力発揮や可能性を広げるために日常的にフィードバックや対話を欠かさないこと」、これは優秀な企業やマネジャーの間では既に行われてきたことだと思います。

その一方で目標管理制度が「評価のための評価」や「業績管理のためだけの評価」という単なる道具になってしまっている例を多く見かけます。「ノーレイティング」は「目標管理制度及びそれに絡む評価制度の撤廃」という部分が注目されました。

しかしなぜ「ノーレイティング」だったか?と言えば、その本質は「社員の能力、可能性を最大限に引き出すことによって、社員と会社の能力を最大化すること」との重要性の再認識にあると思います。そのために「高頻度なフィードバックと対話が重要」「マネジャーのマインドセット」が重要だと気付いのだと考えます。

以上のような「対話重視」あるいは「アジャイル」なコンセプトを持った新しい目標管理の潮流がやがて、同じ考え方に立った目標管理のツールである「OKR」へとつながっていったのではないかと思われます。

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