キャリアドリフトとは何か?

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企業人にとっての「キャリア自律」の本質を見誤るな①<上巻>
~「キャリア自律」は「キャリア」ではなく「自律」にこそ、その本質がある~

企業で働く個人の視点から見る「キャリア自律」の本質は、キャリアをデザインすることでも、キャリアビジョンを無理に作ることでもなく目の前の仕事に集中することです。その積み重ねが結果的に納得性のあるキャリアの形成につながります。

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キャリアドリフトとキャリアデザイン

「キャリアドリフト」とは、神戸大学大学院の金井教授が提唱した「変化の激しい時代は3年、5年先のキャリアデザインを行い、方向性を縛るのではなく、変化に適応し、偶然のチャンスを活かしてキャリアを作っていく」という考え方のことです。※「ドリフト」=drift=漂流

 つまり、周囲の環境の変化に合わせ、漂流するように身を任せてしまうということです。これは「自分の経験やスキル、将来像に向けて、自らの能力を活かすための仕事の形成を進めていくという考え方」である「キャリアデザイン」とはある意味正反対の考え方です。

一見すると「キャリアデザイン」は主体的で、「キャリアドリフト」は流されるままだけで「受け身」に見えます。(ちなみに金井教授は「ドリフト」「デザイン」双方の必要性を提唱されています)「主体的な働き方」が求められる時代にいったいなぜ「キャリアドリフト」という考え方が存在するのでしょうか?

安定が約束?されない時代

約束?された経済の発展(右肩上がりの経済)をベースにしていた企業の終身雇用制度も綻びを見せいている中、会社に頼らず自分のキャリアを自分で考え作っていくことが大切なことであることは誰もが身に染みて感じていることだと思います。

しかし今の時代は技術革新が目覚ましく起こり、たった数年で世の中の構造が大きく変わってしまうことも珍しくありません。その中で3年や5年後のキャリアを計画しても、考えだにしなかった技術の進歩によって、仕事そのものが大きく変わりキャリアが断絶されてしまうということは十分に考えられます。

また、変化が常態化するといったい状況では自分はこの先何をしたら良いのか?がわからないので「キャリアなんてそもそも計画出来ない」という人も現実多いのではないでしょうか?

そこで「キャリアドリフト」という考え方が大切になってくるのです。自分が予想しなかった出来事、たとえマイナスに思えるような出来事も、それを「どう次に活かしていくのか?」いう視点で考えるのが「キャリアドリフト」です。ただ、何が起こるか分からないので、何も考えずに日々漂流するということではなく、起こる変化を主体的に楽しみながら流れに身を任せるようにキャリアを積んでいき、自分の可能性を広げていくというのが「キャリアドリフト」の考え方なのです。

では「起こる変化を主体的に楽しみながら仕事」をするとは具体的にはどうすることなのでしょうか?

 スティーブ・ジョブズと「キャリアドリフト」

スティーブ・ジョブスはスタンフォード大で「Connecting the Dots(点をつなぐこと)」 というテーマでスピーチをしたことがあります。
※「スティーブ・ジョブス」=米国の実業家。アップル社の共同設立者で2011年56歳で没

「先を見越して点を繋ぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何かの形で点がつながると信じなければならない。何かを信じなければならない。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。」


このスピーチは、ジョブズ自体大学を中退してはいますが、「面白そうだから」という理由だけで履修した「文字芸術の授業」で学んだことが、10年後に「マッキントッシュ」を設計している時に活きてきた、というエピソードと併せて語られたものです。

ジョブズはマッキントッシュを設計することを見越して「文字芸術の授業」を取ったわけではないが、この経験があったので、結果的に「マッキントッシュ」は文字を美しく表示し、印刷できる世界最初のPCになれたということではないでしょうか。

 「私が大学に居た時に先を見越して点をつなぐことは不可能だった。しかし10年後に振り返ると、とても明白だった。」

 これらのジョブスの言葉には、「キャリアドリフト」とは具体的にどうすることか?が明確に示されています。つまり、先のことはわからない、だから無理にキャリアを探したり、キャリアを決めたりせず、「その場で信じたものに真剣に取り組むこと」が「キャリアドリフト」の本質的な行動なのです。するとそれが何年後、何十年後かで振り返った時に、自分の中で大きな意味を持つものになっているというわけです。

ではこの「キャリアドリフト」を実際に企業の中ではどうように活用すればいいのでしょうか?「キャリアドリフト」は一般に企業の中で活用しようとすると、その手法が少ないとも言われています。

「キャリアドリフト」は企業にどう活かされるか?

企業で仕事をしていれば、業績目標の達成や成果の捻出は当然の責任なのですがこれに囚われ過ぎるとその達成・捻出結果によってモチベーションが大きく左右されたり、また環境変化に対する柔軟さも失われていくこと言われます。

またそのような短期的な発想のままでは人事異動や配置転換、転勤といった組織の中・長期的な施策に対して「せかっく積み上げたものがご破算になり、また最初からやり直し」というようなネガティブな気持ちを持ってしまい、これまたモチベーションが下がってしまう可能性が高くなりがちです。

「キャリアドリフト」は、このような短期的発想ではなく、例えば「マネジメントを極める」「専門性を磨く」などの主体的な中・長期的なゴールを自分で設定して日々の仕事に取り組むことで業績や成果がより良く達成されるだけでなく短期的発想に囚われず、中長期的な発想も持ち合わせた組織風土の醸成にも貢献します。

 また人事部門としてもこうした各自が設定している長期的ゴールを把握していれば各従業員が望む方向と組織の必要性を鑑みた人材配置が可能になりますし、また各人の主体性が増すことから人事部門が行うモチベーションアップのための施策も減らせ、人材育成のための投資効果も良くなるはずです。

しかしながらこのような「キャリアドリフト」が、今すぐすべての企業に導入できるかというとそこにはいくつかの問題があり、実は簡単には導入できません。

「キャリアドリフト」導入上の問題

 1.目標管理制度の問題

キャリア自律」の必要性が言われている昨今、キャリアの研究者の中には、「従来の人事制度が社員の依存性を助長してきた。したがってキャリア自律時代においては、従来の人事システムで残すものは何もない」という意見を言う人達がいます。

しかしこの主張は「人事制度によって人間の心の姿勢(依存性や自律性)」は決定されるといういわば「環境的決定論」に立脚しており、「どんな環境変化も受け止める」という「キャリアドラフト」の考え方とは対極のものです。

問題は研究者ではなく、現場で働く人たちが「どんな環境変化も受け止めて、前向きに捉え、目の前の仕事に真剣に取り組む」という「キャリア自律」が出来るのか?また出来ているのか?という点です。研究者の言っている通りにすることは現実には不可能です。どんな人事制度の中であろうと「それを受け止めて、前向きに捉え、目の前の仕事に真剣に取り組む」という考え方を現場で働く人達が持てないと「キャリアドラフト」は机上の空論になってしまいます。

2.ミドルマネジメントの問題

東京大学の高橋伸夫教授は、高度成長期の企業調査分析で「健全な組織は、上司の権威など屁とも思わない部下とそういう元気のいい部下を頼もしく思う上司から成り立っている。そこに、日本企業の本当の強さの秘密が隠されている」と述べています。

すべての企業組織がこのような健全なものであれば、「キャリアドリフト」は何の問題もないのですが、多くの組織ではマネジメントの改善が遅れ、「部下の自律性」を阻害するようなマネジメントが未だ存在しているのも事実です。

これではいくら部下側が「自律しよう」「キャリア自律の考え方を持とう」としても「依存性」を助長することにしかならず、「キャリア自律」という主体的な考え方は持てず、結果やはり「キャリアドリフト」など机上の空論となってしまいます。

まとめ

「キャリアドリフト」は、「日々の変化や環境の変化を主体的に受けとめて目の前の仕事に真剣に楽しく取り組むことで成果を創造しかつ結果的にキャリアを創造する」という考え方です。

但し、これは単なる「プラス思考」ではありません。目の前の仕事に真剣に楽しく取り組めるのは、「自分のキャリアは自分で創る」という「キャリア自律」をしているからであり、「キャリア自律」するには他人からではなく自分自身による自分自身へのトレーニングが必要です。

例えば目の前の仕事に集中し、その積み重ねで結果的に納得性のあるキャリア形成を成し遂げるには「外発的動機」ではなく、「内発的動機」による職務遂行が出来るようになる・・・などのトレーニングが必要です。
詳しくは下記↓にまとめてみました。参考にして下さい。

またメンバーの自律性を阻害せず、「リーダーとしてのキャリア形成」と「自律型組織実現のカギになるミドルパーソナル・パワーの開発」をどうすればいいのか?についても↓に載せています。ぜひ参考にして下さい。

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企業人にとっての「キャリア自律」の本質を見誤るな①<上巻>
~「キャリア自律」は「キャリア」ではなく「自律」にこそその本質がある~

企業で働く個人の視点から見る「キャリア自律」の本質は、キャリアをデザインすることでも、キャリアビジョンを無理に作ることでもなく目の前の仕事に集中することです。その積み重ねが結果的に納得性のあるキャリアの形成につながります。

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ミドル・リーダーのためのリーダーシップ
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「自律型組織」実現が要請されている現在“管理職”と呼ばれる人たちのリーダーシップをどう捉えればいいのか?をレポートしています。

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