
マーケティング・営業革新
「木を見て森を見る営業マネジメント(セールスイネーブルメント)」が今、営業マネージャーに求められている
今度の営業システムは、メンバー全員の商談の進捗具合が
「見える化」されて、すっごい便利ですよね~
ぜんぜん便利じゃないよ!
営業現場のことを知らない部門が作ったシステムなんて
使いづらくてしょうがないよ!!
けど、ボクみたいな若手からすると
皆さんの商談状況が「見える化」されるだけでも
すっごい便利ですよ~
いやそうでもない!
「見える化」されたのに?
なんでですか~?
そもそも、、、字が小さくて「見えない」!
!?((ある意味、深刻な問題!!!))
SFAやCRMなどツールの導入はしましたが、「営業育成の効率改善」「営業属人化からの脱出」「顧客接点時間の確保」など、営業の生産性向上のための課題解決になかなかつながりません。導入したツールに問題があるのでしょうか?
それはツールの導入をしただけで、営業プロセスの再設計や、組織再編、教育などの施策がバラバラに打たれているからです。これらをきちんと組み合わせ、営業施策をトータルで考え実行しなければ、営業の生産性はむしろ低下するので注意が必要です。今回は、営業の生産性を向上させるために注目されている「セールス・イネーブルメント」の概念や背景、そして次回にその導入のポイントについて、計2回に分けてお伝えします。
「木を見て森を見る営業マネジメント」(セールスイネーブルメント)とは?
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、2010年ごろに米国で生まれた「営業活動全体を改善し、最適化するためのマネジメント」のことを指します。
商談や育成、販促資料の管理など、営業には様々な業務があります。多くの企業では、その効率化のためにITツールを導入したり、あるいは人事が主導で営業研修を行ったり、また情報システム部門が営業システムの設計・導入を行っています。しかし、たいていそれらは部分的な改善(木)に終わり、営業部門全体の課題解決(森)につながりません。そこで「営業プロセス全体を一貫して設計・管理し、営業部門全体の課題解決を図る」というマネジメントがセールスイネーブルメントです。
例えば今までも、セールステック(Sales Tech:営業(Sales)と技術(Technology)を掛け合わせた造語で、ITツールを導入して営業活動を改善する取り組みのこと)という営業改革方法がありましたが、これとは違い、セールスイネーブルメントでは、セールステックは目的ではなく、あくまでもその手段として活用されます。つまり単なる顧客管理などの営業支援ツール(木)としてだけでなく、営業活動を数値により可視化し計測して、課題解決にどれだけ効果があったかを把握すること(森)に用いられます。
ちなみ、セールスイネーブルメントでマネジメントされる営業部門の課題には以下のようなものがあります。
- 採用部門、技術部門、マーケティング部門、カスタマー・サクセス部門との連携強化
- 販促ツールの創出
- 営業社員の教育や営業マネージャーのコーチング力向上
- 営業活動上の各種データの整備と営業活動への活用
- 営業組織の最適化
- 営業戦略の浸透と実行
- 営業活動を数値化して検証し、営業活動の生産性向上を図る
なぜセールスイネーブルメントが営業マネージャーのマネジメントとして注目されているか?
では、なぜ今セールスイネーブルメントが営業マネージャーの身につけるべきマネジメントとして注目されているのでしょうか?その理由を挙げておきます。
- マーケティングを主軸においたインバウンド営業の増加
MA(マーケティング・オートメーション)の普及により、テレアポや飛び込みが主流だった時代が終わり、昨今、多くの企業ではMAツールの活用によって、膨大な数の見込み客を入手することができるようになっています。ところが実際には「マーケティング部門からどんどん多くの見込み客が営業部門に提供されているのに、営業部門がそれを受注につなげられない」という課題を抱えた企業が増えています。この原因は、対応に必要な営業の生産性向上が遅れていることと、見込み客のそれぞれのニーズの違い(単なる情報収集の見込み客、競合と比較している見込み客、契約直前でためらっている見込み客等)に対応できる営業力、商談力の欠如が挙げられます。
このように「マーケティングを理解し、マーケティング部門と連携した営業活動を行う必要が出てきた」ことが、セールスイネーブルメントへの注目度が上がっている原因です。これまでのように、「マーケティング部門は見込み客を営業に渡すまでが仕事」「営業は受け取った見込み客に提案をし、受注さえしていれば良い」というように、両部門がバラバラに仕事をしていては、営業全体の受注増や生産性向上は図れなくなってきているのです。 - サブスクリプションモデルの普及
「サブスクリプションモデル」とは、ユーザーが物を買い取るのではなく、物の利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式のビジネスモデルのことで、ソフトウェアの利用形態としては既にお馴染みです。ご存知のように、このモデルは「とりあえず売ってしまえ!」という「売り切り型の営業」してしまうと、後に解約が増えると言われています。「買った後顧客がそれをどれだけ上手にビジネスに活用できるか?」が解約を防止し、継続使用を促すというのが、サブスクリプションモデルに限らず、多くのサービスの販売において重要になってきています。
そうなると、多くの営業部門は、これまで以上に製品や商品、あるいはCS(カスタマー・サティスファクション)体制について理解しなければならなくなります。そして、「どうすれば顧客が、製品やサービスをよりビジネスに活用できるのか?」という提案をしなければならないのです。その際の、販促資料や提案内容1つとっても、営業部門だけでは、作ることが難しくなってきています。このように、サービス・技術・製造部門等との協力体制を含めて、営業プロセスを再構築しようというのがまさに、セールスイネーブルメントなのです。 - CRMやSFAへの投資を回収しきれない企業が多い
CRMとは、Customer Relationship Management (カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略で「顧客関係管理」、SFAはSales Force Automation (セールス・フォース・オートメーション)の略で、「営業支援システム」とのことです。両者は今、営業部門に急速に普及してきています。これらのシステムは導入・運用に数百万円もかかるものもあり、またそのシステムを使いこなせるまでの労力・教育コストも相当かかります。しかし、SFAやCRMの導入により、「案件管理や商談情報の見える化」は達成したが、「営業の提案力アップ」や「スキルの標準化」という営業力そのもの向上にはつながっていないという課題を抱える営業部門が非常に多く、経営としてはシステムの投資対効果に疑問を持たざるを得ない状況です。
SFAやCRMというツールの導入だけでは解決しきれなかった「担当者の売上げ格差是正」「育成効率改善」「営業人員不足」「営業属人化からの脱出」「顧客接点時間の確保」という営業部門全体の課題を、導入済みのツールを、営業プロセスの再設計、組織再編、研修・コーチングなどと組み合わせて解決を図ることで結果的にシステムの投資対効果を高めるのがセールスイネーブルメントなのです。
多くの企業では「販促資料」は営業企画部門が作成、「営業教育」は人事部が実施、「システ
ム」は情報システム部が設計・導入というように仕事を分担しているのが普通です。この分担
は良いとしても、各部門から提供されたものを営業組織全体の課題解決にきちんと結びつける
マネジメントができていない営業マネージャーがひじょうに多く存在します。
販促資料を営業企画からもらったら、個人に配布して終わり…ではなく、「誰が、どの営業プ
ロセスで、どれくらい使っているか?」を掴み、その使い方を共有するための教育を人事と協
力して行う。その結果どれだけ生産性向上に反映できたか?を把握し、それをまた営業企画や
人事と共有しながら、販促資料作成や教育に反映する・・・セールスイネーブルメントは、この
ように営業組織の課題解決のために、その施策を他部門と連携しながら一括してマネジメント
するものなのです。
今後の営業組織のマネジメントに不可欠なセールスイネーブルメント
従来バラバラに打たれていた営業組織の課題解決の施策を、営業マネージャーが包括的にマネジメントし、継続的に営業部門の生産性向上を図る取り組み、セールスイネーブルメントは、これからの時代営業マネージャーに不可欠な営業マネジメント力です。しかし、「セールスイネーブルメントの概念は分かったが、自社の営業部門ではどう進めたらいい?」また、「その推進は誰がどのように行う?」などの疑問もあるかと思います。そこで、別の機会に、営業マネージャーはマネジメントに不可欠な「セールスイネーブルメント」にどう取り組べきか?についてお伝えし、疑問にお応えしたいと思っています。